スティール弦のチューブ

今日は、ヴァイオリン弾き向けのマニアックな話題です。
約２年半前に原田ヴァイオリンhttp://www5.synapse.ne.jp/harada-vn/の原田　哲さんに作ってもらったエレクトリック・アコースティック５弦ヴァイオリンが良く鳴るようになって来ました。これまでこの楽器に合う弦を探して、あーでもないこーでもないと色々な弦を試してきました。　

4/4サイズの楽器を弾くようになった頃は、習っていた先生や行きつけの楽器店で勧められるままにガット弦を張っていました。まだ子供で弦代は、当然親が負担です。それにその頃はまだ、ナイロン（シンセティック）コアの弦などは無く、スティール弦は分数サイズ、初心者向け、音がチープという印象でした。

それがいつ頃からか、当時のスティール弦よりガットに近い音色で、ガット弦よりチューニングが安定していて切れにくい。そしてガット弦よりお財布に優しいナイロン（ぺルロン）コアのドミナントを愛用するようになりました。今でもこの弦は、ヴァイオリン弦の定番ですね。そして現在は、ドミナント以外にも数えきれないくらいのナイロン（シンセティック）弦が、多数出回っています。もっとパワーや長寿命、音の深みが欲しいなどなど・・・。

５弦ヴァイオリンの場合、まずC線には何がいいか、これで悩みます。様々なヴィオラ弦を試しました。がやはり現在は、５弦ヴァイオリン用のヘリコアに落ち着きました。自分の楽器では、音色と鳴りのバランスがとれています。それを基準にほかの弦をどうするか（特にD,G線）。Evah Pirazzi,Obligato,Warchal Brilliant,Zyex,Peter Infeld・・・色々と試しました。それぞれに一長一短があります。

昔使っていたガット弦のオリーヴを使うのが良いのかもしれませんが、過酷な気温湿度の変化に対する耐久性、チューニングの安定し易さを考えると躊躇してしまいます。ネットで弦についていろいろと見ていたら、スティール弦についてもちょこちょこと評判が出ていて、そういえばケイシー・ドリーセンやクリスチャン・ハウズはヘリコアを使っていたなぁ～と、思い出しました（彼らはアメリカ人でダダリオ社とエンドースメント契約してたりしますが）。

そこで今現在、ヴァイオリン弾きの話題によく上がるスピロコア、ヘリコア、フレクソコアの三つから選択したのが、フレクソコアです。フレクソコアの音がガット弦に近くて、A.D.Gともに音色音量が良いという書き込みと、ラカトシュが使用している弦。というのが決め手でした。

さて前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。スティール弦は、ガット弦、ナイロン弦に比べて細いですから、張った時に駒に食い込みます。駒の溝と弦の保護のためのチューブが、一緒に入っていることが普通と思っていました。がしかし、パッケージを開けてみたら弦にチューブは付いていませんでした。パッケージの中を見てもありません。駒溝に羊皮紙（E線には、必ず付いているやつですね）を貼って使えということでしょうか。仕方がないので、一度だけということでチューブ無しで張ってみました。

音色は柔らかく倍音も豊かで、最新のスティール弦は違うなあと感心したところで、一旦弦を外しました。ですがまた付けるにはチューブが必要です。そこで全ての楽器ケース、棚、散乱した机の上、などから家にあるヴァイオリン弦をかき集めました。そうしたら、ものすごく昔に買ってあったクロームコアに付いているチューブがありました。ほかにも予備用に取ってあったE線に付いているやつやら。

そして再び、今度はチューブを装着してフレクソコアを張ってみました。それが、最初の写真です（E~G線フレクソコア、C線５弦ヴァイオリン用ヘリコア）。見た目は良くないのですが、弾いてみてビックリ！　音が全然違うではないですか。チューブを装着した方が音量と倍音が増して、艶やかに響きます。普通は、チューブを装着すると逆の作用になると想像していましたが、嬉しい想・定・外！です。トマスティック社のE線に使われている透明なチューブよりも、ピラストロ社やゴールドブロカットに付いている黒いチューブの方が、音がいいみたいです。フレクソコアのE線もいい音してます。当たり前かもしれませんが、A線とのマッチングもスムーズです。因みに、C線はチューブ無しの方が良かったです。

とまあ長くなりましたが、今時のスティール弦、イケテルぞ！そしてチューブも使って見てびっくり！と言うお話でした。音色の好み、楽器の性質で異なるとは思いますが、興味のある方はどうぞ試してみてください。　　　　　　koz